「大豆が力強く育つためには、何が一番大切だと思いますか?」
講演や授業でこう問うと、水、肥料、光。
といった答えが返ってきます。
一番大切なのは「風」なんです。
風に吹きつけられると、それに負けまいと、
茎は固くなり、しっかりと根を張るのです。
人間も同じ!
環境が良すぎて試練がないと我慢ができず、他人への思いやりがなくなってしまう。
いじめネットでの心ない中傷、急増する自殺者…。
悲しいニュースが続きます。
あるとき、「物心がついて多感な小学生に命の大切さを伝えよう」と思いつき、手製の栽培教材「大豆ポット」の販売を始めました。
販売を始めて15年が経ちました。
今では、首都圏の小学校を中心に、大豆を通した「命の授業」を行っています。
大豆ポットは、鉢、種と土、肥料のセット。
春に種をまき、半年かけて世話をすると冬には1鉢から50粒の大豆が収穫できます。
「大豆の一生は、人の生き方と重なるんです。」
子供向け教材に「大豆」を選んだ理由と、「一人用のポット」にした訳!
芽が出て、水や肥料を吸い込み、太陽の光を浴びてすくすくと育つ。
花が咲き、受粉すると種ができ、さやの中で実を大きくした後、枯れていく経過は人生そのもの。
一人用ポットは、「自分の大豆」という意識を強く持ってほしかった。
畑にたくさんの植物が植えられると、興味を無くし子供は世話をしなくなると思いました。
大切な命を預かっているんだという意識を持ってもらうために…。
水やり、草むしり、追肥を怠ると枯れてしまう状況を作り出しました。
単にポットを販売するだけではなく、農作業の合間を縫い、年に10回ほど小学校に赴いて、大豆の育て方を通じた「命の授業」や「豆腐や味噌の作り方」の指導を行っています。
導入する小学校は、広い敷地を持たない首都圏の学校を中心に、全国で100校ほどに広がりました。
「大豆と人の生きる順番が同じだったとは知らなかった。」
「大きくなるのが楽しみです。」
「大切に育てます。」
などと書かれた子供たちからの手紙が毎年たくさん届きます。
今、僕たち、私たちは、ご先祖様から受け継いだ命を生きている。
小さな大豆を通じて、子供たちが「命の大切さ」を理解してくれることがとても嬉しく思います。